Hybrid HDF と通常HDのペントシジン・炎症性マーカー・透析効率の比較研究
渡辺内科クリニック 透析センター
〇増田樹・島立竣介・芳野響一・切通慎太郎・岸部伊吹規・新井綾夏・西川瑞基・道園ルリ子・斉藤浩次・ 栗原研二・渡辺幸康
【はじめに】Hybrid HDFは、血圧低下や末梢循環の改善、ヘモダイアフィルタの性能改善、溶質の除去率の向上、及び、長期透析合併症予防を目的とした新しい血液濾過透析療法である。今回、我々は通常HDからHybrid HDFに変更し、酸化ストレスマーカーのペントシジン、炎症性サイトカインなどの中分子量物質から大分子量物質の溶質除去性能・透析効率がどのように変化するか検討を加えてみた。
【対象および方法】対象は、当院通常HD13例をHybrid HDFに変更し、検査項目は、血中ペントシジン、高感度CRP、TNF-α、IL-6、IL-1β、プロカルシトニン、α1-MG、β2-MG、プロラクチンとし、治療前後の値を測定し、除去率をHt補正した。アルブミン漏出量についても測定した。通常HDから2週間後にHybrid HDFに変更し、治療前後でどう変化したか検討し、Ht補正した溶質除去率について計算した。Hybrid HDFは8L後希釈HDFに間歇補充1.4Lの治療モードとし、透析液はニプロ社製リンパックTA1を、透析機器はニプロNCV-3(I-HDFのプログラミングは当院独自の方法)を使用した。
【結果】TNF-α、プロカルシトニン、IL-6、α1-MG、β2-MG、プロラクチン、ペントシジンのHt補正した除去率は有意にHybrid HDFがHDより優れていた。アルブミン漏出量はHybrid HDFの方がHDより多く、クリアスペース率は有意にHybrid HDFの方がHDより高かった。
【結論】通常HDからHybrid HDFに変更し、透析前後の除去率を検討したが、TNF-α、プロカルシトニンなどの炎症性マーカーの除去率は有意にHybrid HDFの方がHDより優れており、α1-MG、β2-MGなどの中分子から大分子量の溶質除去率は有意にHybrid HDFの方がHDより優れていた。また、酸化ストレスマーカーのペントシジン除去率は有意にHybrid HDFの方がHDより優れていた。長期透析合併症予防という観点からHybrid HDFは有用な透析療法となりうるものと思われた。