QDの相違によるon-line HDFの炎症性マーカーに対する影響
渡辺内科クリニック 透析センター○棚橋宏介・捧竜成・斉藤浩次・柿沼敦子・栗原研二・渡辺幸康
東邦病院 腎臓内科 渡辺嘉一
【はじめに】SLED-fは透析液流量を落とすことによって小分子物質の除去効率は下がるが、炎症性サイトカイン等の中から大分子量物質の除去率が改善するなどのメリットが得られることを目的とするCRRTとIRRTのhybrid therapyである。この原理を利用し、今回我々は透析液流量QDを落とし、緩徐に血液と透析液が接することにより、炎症性サイトカインなどの中から大分子量物質の除去性能が良くなると予測し、通常の透析液流量QDを500mL/minから300mL/minに落とした分on-line HDFでの置換液200mL/minにまわし、4時間で48L前置換でlow QD on-line HDF を施行した。この方法が通常QD500mL/minのon-line HDFと比べて炎症性サイトカイン等の炎症性マーカーに対して、差が認められるかを検討してみた。
【対象および方法】対象は、当院維持血液透析患者7名。検査項目は、高感度CRP、高感度TNF-α、高感度IL-6、高感度IL-1β、プロカルシトニンとし、治療前後の値を測定し、除去率を計算した。また、アルブミン漏出量についても測定した。QD300mL/minのon-line HDFから1週間後にQD500mL/minのon-line HDFに変更し、上記数値が治療前後でどう変化したかを検討し、除去率についても計算した。透析液はニプロ社製リンパックTA1を、透析機器はニプロNCV-3を使用した。治療条件はQD300mL/min及びQD500mL/minのon-line HDFともにQB200mL/min、置換液は透析液から分配し、前希釈で48Lとした。透析時間を4時間、ヘモダイアフィルターはファインフラックス190S~210Sを使用した。
【結果】透析前後での炎症性マーカーは高感度TNF-αに関してはQD300群、QD500群ともに有意に減少していたが、プロカルシトニン、高感度IL-6、高感度IL-1βに関してはQD300群、QD500群ともに不変であり、また、高感度TNF-α、プロカルシトニン、高感度IL-6、高感度IL-1βの除去率に関してはQD300群、QD500群ともに有意差は認められなかった。アルブミン漏出量はQD300群、QD500群ともに有意差は認められなかったが、クリアスペースに関してはQD300群に比べてQD500群の方が優れていた。
【結論】炎症性サイトカインなどの炎症性マーカーの治療前後における除去率に関してはQD300mL/minのon-line HDFとQD500mL/minのon-line HDFにおいて、有意差が認められなかった。アルブミン漏出量はQD300mL/minのon-line HDFとQD500mL/minのon-line HDFにおいて、有意差が認められなかった。クリアスペースに関してはQD500mL/minのon-line HDFの方がQD300mL/minのon-line HDFに比べて優れていたが、追加として、小分子量から中分子量物質の除去率においては差が認められなかった。