透析患者の二次性副甲状腺機能亢進症

PIT(POIT・P-CIT), PEIT症例考察 渡辺内科クリニック(渡辺幸康)

 

1.IV-OCT pulse療法の限界について

Ca, Pの上昇(重松先生はCa 11.0mg/dL以上で中止している。また、Pについては弓田先生は6mg/dL以下、Ca×P積が65mg2/dL2をこえないとしている。欧米ではPは4.6以下としているが、Renagel(=フォスブロック)の発売で日本でも変わるだろう。)また、かゆみの出現増悪でIV-VitD pulseを中止せざるをえない症例もある。i-PTH≧1000pg/mLあるいはi-PTH≧700pg/mLでOCT不応症例、推定体積が1ml (1cm3)以上、例えば3腺以上多く腫れているとかの場合、IV-VitD pulse療法の限界となることが多い。

2.PIT(POIT・P-CIT)の適応と限界・副作用について

エコーで腫れている腺があれば、早めからやっていいと思われる。また、PEITでみられる反回神経麻痺(嗄声)はないといってもいいので、どんな腫脹腺にも可能かと思われるが、大きな腺では無効も多い。また、異所性副甲状腺にやって、安全にできて効果があったという報告もみられる。副作用は疼痛・腫脹・血腫などがあるが、大きな副作用はないように思われる。角田先生はP-CIT 24例中18例で有効、6例で1年後にi-PTHは上昇し無効と。有効例はCa×P積は低下したが、無効例では上昇はしなかったが、改善は認められなかったと報告。mass volumeは有効例では低下したが、無効例では低下しなかったと報告している。また、有効例で有意に腫大腺が縮小していたが、血流は残存していたと。組織学的には線維芽細胞の増加と線維化が進行し、TGF-βの発現を認め、また、アポトーシスを示すTUNEL陽性細胞は認められたが、それらの細胞のPTH分泌は抑制されていなかったと報告している。

3.PEITの適応と限界・副作用について

PEITのガイドライン参照。

4.PTXの適応と制限について

富永は第一に、C-PTH 20ng/mL以上、HS-PTH 50,000 pg/mL以上、1-84 (whole) PTH 500pg/mL以上、第二に、画像診断(CT,超音波, 201TlClシンチグラム, MR)での副甲状腺の腫大、第三にX線上での線維性骨炎の存在(手指骨骨膜下吸収像がもっとも鋭敏)と、骨回転の亢進(99mTc-MDPによる骨シンチグラムでの骨へのup takeの亢進)により、高度な2HPTの存在を確認して、なおかつ内科的治療が十分に行われた症例として、身長の低下、骨格の変形、血管、心臓の弁膜などの異所性石灰化などが進行する前にPTxを施行すべきとしている。また、手術の制限としては全身状態、特に心機能の低下などで手術のリスクが高いなどが考えられる。また、患者が手術を望まない場合があげられる。

5.POIT・P-CITの注入量・期間・回数について

今回われわれはPOITでは大きい方の左腺については推定体積が3mL弱と考えられたので、最初はOCT 1mL(10μg/mL)、だんだん増やして、一回につきmax4mLを局注した。P-CITについては、一回についてロカルトロール (1μg/mL) 3mLを局注した。期間・回数は2週間で6回、非透析日に施行した。1997年、深川・貴田岡らは経口パルス療法にも抵抗する著明なPTH過分泌を示す7症例の腫大腺に、その推定体積の70~90%の1,25-VitD溶液(濃度1μg/mL)を超音波下に注入した。注入腺は結節性過形成を示す0.5cm3以上の腺すべてを選択し、2週間に計6回注入し、その直後よりPTH濃度200pg/mLを目標に、経口パルス療法を行ったと報告している。

6.PEITの注入量・濃度・期間・回数について

ガイドラインでは注入量は推定体積の80%以下を目安にすると書かれているが、貴田岡によると少量分割注入の場合は推定体積の50%を1回注入量とするとしている。また、濃度は角田らによると100%エタノール9mlと10%リドカイン1mlの混合液とし、貴田岡らは90%エタノール9mlと1%キシロカイン1ml混合液としている。おおよそ、70%~90%のエタノールと思われる。また、100%を使用する施設もあるが、濃度が濃いほど反回神経麻痺の危険性が高まるものと思われるが、低すぎると壊死に陥りにくいとも思われる。われわれは今回第一回目のPEITに際し、90%エタノール9ml+1%リドカイン局麻用1mlを用いたが、5回の局注(0.5, 0.5, 1.0, 1.0, 0.5ml)後1週間で血流が現れ始めたため、今後、もう少し濃度を高めてやってみようと思っている。次に期間はRIPPというプロトコールでは1週間以内に集中的に、必要にして十分な回数に分けて実施することが理想であるとのこと。われわれの症例は大きさが大きかったので、血流が消失するまでに、非透析日に連続して5回を要した。いずれにしても、血流が消失することが大事である。

7.POITとP-CITどちらが有効か?どちらが副作用が少ないか?TGF-βの差はどういう意味か?

どちらも差がないように思われるが、高濃度が長時間停滞という意味ではロカルトロールの方がいいように思われるが、局所的な高濃度が短時間でも実現できれば効果が期待できるという考えもある。今後の検討課題である。われわれの感覚では今の製剤よりもさらに高濃度で、局所に停滞できるドラッグデリバリーシステムが開発されることを望んでいる。

次に、TGF-βは線維化とみてもいいが、細胞のアポトーシスを調整するともいわれる。また、TGF-βは細胞の増殖と分化にも関わっているといわれている。和歌山県立医大の椎崎らは二次性副甲状腺機能亢進症モデルラットのPOITの実験で、VDR mRNAは1回投与後増加し、2回投与後は減少したと報告している。1回目投与してVDRがup-regulationされ、その細胞がapotosisを起こしたことで、2回目の時はselectiveにVDRが少ない細胞が残存してしまい、selectiveにVitDに反応性の悪い細胞が残ってしまったという可能性を指摘している。今回われわれのデータではP-CIT後1週間でTGF-βは上昇したが、次のPOITではTGF-βは上昇しなかった。このことは椎崎らの報告と何らかの関連性があるものと思われた。

8.POIT・P-CIT後の血流評価や副甲状腺推定体積とi-PTHの反応性について

縮小を示すものは効果がある。血流は直後に消失、その後再び血流が現れる。最終的には血流は残存する。

9.POIT・P-CIT・PEIT治療中・治療後の後療法について

IV-VitDを後療法として追加すべきかと思われる。効果があれば、PO-VitDパルスに変えてもいいのだが、IV-VitDの方がコンプライアンスはいいのではないかと思われる。

10.多発性嚢胞腎の被膜の異所性石灰化の頻度について

Levine Eら(Am J Roentgenol 159, 77-81, 1992)によると、53例中13例(25%)で認められ、おそらく、cyst hemorrhageによるものと考えられている。

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